佐々木充彦 『インターウォール interw@//』が良かった。
本編は、全部で600ページ超。フルカラーで辞書ぐらい分厚い。「愛蔵版」ならよくあることだけど、新人作家のデビュー作で、漫画で、価格も1,995円となると、手を出しにくいところではある。
試し読みができるので、まずは冒頭だけでも。【1話 試し読み】
紹介文には「長編・ボーイミーツガールSF」とあり、止まった「現在」、繰り返される「過去」、消えてしまった「未来」というキーワードが散りばめられている。
主人公の“僕”が、彼女“編星さん”を探すなかで訪れる、精神世界のような異世界での出来事は、不条理さや、怖さ、儚さがあり、しりあがり寿 『真夜中の弥次さん喜多さん』を思い起こした。
サスペンスのような構成でもあるため、編星さんが何者で、なぜいなくなってしまったのか、生きているのか、死んでいるのかなど、主人公を含む人物の、「存在」についての解釈は分かれるところかもしれない。
なにしろ主人公の“僕”も消えてしまっているのだから。
ただしかし、明らかなのは、この作品のもっとも感動する部分でもある、彼と彼女が「会えた」ことを証明するためのアイデアにこそ、私たちは「実存」を見るということだ。
2012年のベスト漫画に挙げた、宮崎夏次系 『変身のニュース』にも現代の切実な実存主義とでも言うべきものを感じたが、私の2013年はこの漫画からスタートした。
読み終えて本を閉じたとき、カバーでも泣けた。カバーデザインも秀逸。
インターウォール interw@//
posted with amazlet at 13.02.04
佐々木充彦
パイインターナショナル (2013-01-18)
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